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2007年3月18日 (日)

シネマ評~明日の記憶~

今さら説明することもないくらいの作品だが。

一体どのようなストーリー展開なのかに興味があって観てみた。
働き盛りのビジネスマンを突如襲った若年性アルツハイマー、狼狽し、怯える本人を渡辺 謙が、それを正面から受け止め支えて行く献身的な妻を樋口可南子が、ともに熱演している。

会社の同僚や通い慣れた取引先の場所が思い出せない、重要な予定を失念する・・・
当たり前のことが徐々にできなくなっていく、仕事に支障が出ないわけがない。
周囲の驚き、心配も病名が明らかにされることで同情や憐れみに変わっていく。

時期も時期、あるクライアントの一大キャンペーンのプロモーションをめでたく受注し、まさにこれから、と言うところだった。
当然仕事ははずされ、降格に配置転換という屈辱が追い討ちをかける。

これは会社に生きる我々にとって、焦りや失望ではなく、まさにリアルな“恐怖”だ。
このプロセスが実によく表現されている。

妻側の闘いは古くからの友人(渡辺えり子)の応援を受けながら進んで行く。
ともすれば絶望感に打ちひしがれそうな毎日を、自ら気持ちを鼓舞させて奮闘する姿が涙を誘う。

主人公がやり手のビジネスマンで、部下からも慕われ得意先からも信頼篤く、良き妻と良き娘がいて・・・という設定は陳腐と言えば陳腐ではある。

しかしそれでもこの作品は、泣ける。

若年性アルツハイマーと宣告を受け、絶望して病院の非常階段で頭を抱える主人公に、
妻の言葉。
「私がいます。ずっと、そばにいます。」

退職の日、かつての部下たちが渡したのは、名前入りの自分の写真。
主人公の病気を知った上で、自分たちを忘れないで欲しいとの思いを込めて。

香川照之演じる得意先企業の担当者。時に利害が対立する立場でありながら、事態を知ってから、激励の電話をかける。言葉は乱暴でも、そこには同志を労わる優しさが溢れていた。

こんな感動的なシーンを散りばめながら、ストーリーは最終章へ入っていくわけだが、ラストはかつての想い出の地。

後を追ってきた妻に、彼がかけた言葉は
「どうしました?」
だった・・・

もしや、の奇跡はないことを正視させて終わるのである。

できれば、症状が進行していく中での家族の関わり方が、妻だけでなく娘、そしてその夫も含めて描かれていても良かったと思う。

それでも充分考えさせられる作品である。

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