書籍・雑誌

2011年5月12日 (木)

書評-『沖縄苗字のヒミツ』

4月20日のこの欄でも紹介した2冊の沖縄関連書籍

そのうちの2冊目『沖縄苗字のヒミツ』を読み終えた。

Okinawa_myoji

結論から言うと、かなり堅い真面目な本。

沖縄固有の珍しい苗字の由来などを紹介する内容かと期待して購入したのだが、ちょっと違う。

無論その部分にも触れてはいるのだが、この本の主題ではない。

沖縄に何度も通っていると、特有の苗字の多くが、地名にも存在することに気付く。

集落の名前が苗字に転化されたのだろうか?という程度は素人でも想像が付く。

そしてさらに、「中田」ではなく「仲田」、「前田」ではなく「真栄田」などなど、“内地”と同音“異字”の苗字が多いことにも気付く。

これは薩摩の琉球統治策として、「やまと」と同じ文字を禁止したためだと何かの本で読んだことがある。今までこの説を鵜呑みにしていたが、この本では、その史実は認めているものの、その効力についてはまだまだ検証の余地があると述べている。

ほかにも、「金城」は「かねぐすく」か「きんじょう」か、などの読み方の考察も深く行っており、興味深い。

著者は、このような文字替え、読み替えは薩摩の政策の影響も認めつつ、沖縄人自らの意志による部分もありそうだと述べ、その根拠として江戸から近代に至る時代背景を分析している。

書籍タイトルから期待していたものとはダイブ内容が違う。書店に並んでいて手にとることができたら、多分買わなかっただろう。

幸か不幸か書店で見つけることができず、ネットで注文したからこそ読めた本だ。

最近は「活字」と言えば、アウトドアや自転車の雑誌やムックばかりで、この手の極めて真面目な書籍は読了するのにえらく時間がかかる(笑)

しかし、読んでみた結果は○である。

苗字にまつわる考察の過程であぶりだされる、「沖縄」の常に微妙な立場、先人の苦労や苦悩・・・

深い深い意味があったことを思い知った。

沖縄好きの人全てにオススメ、と言うわけには行かないが、文化や風俗を違った角度から考えてみるにはなかなか良い本だ。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2011年4月20日 (水)

書評-『琉球怪談』

比較的よく見るTV番組で、BS日テレの『ありんくりん沖縄』という番組がある。
名前の通り、沖縄を様々な角度から紹介する番組だが、2008年9月まで放映されていた『沖縄楽園スタイル うちなー亭』という番組のリニューアル版だ。

その4/5の放送で紹介されていた“県産本”で興味を引いたのが、ボーダーインク社から出版されている2冊。

  • 『琉球怪談』 小原 猛 著
  • 『沖縄苗字のヒミツ』 武智方寛 著

早速ネットで注文した。ローカルな出版社の超ローカルな書籍なので、果たしてあるか不安だったが、意外にも簡単に見つけることができた。ネット恐るべし、である。

さて、どちらから読むか、当然の如く「怪談」からだ。

Ryukyu_kaidan

100本のろうそくを立て、怪談を一つ話すごとにろうそくも1本消して行く。そして100話目を語り終わって全てのろうそくを消した後に“何か”が起こるという言い伝えに則り、怪談を100話集めたもの。

とは言え、言い伝えの類ではなく、著者が体験者から聞き取りをして構成している、つまり全て実話なのだ。当然シチュエーションは現代である。

その内容も、怪談と言うより民話、寓話に近い雰囲気があり、必ずしも恐い話ばかりではない。むしろ恐い話はほとんどないといってもいいだろう。

ちょっと残念なのは、一話一話が非常に短く、全体的にブツ切れの印象が否めないこと。
“100”に拘りすぎたのか、一つのストーリーとして語った方がスッキリする話を強引に2話3話に分けて記載していること。
稲川淳二ならもっと情景描写を細かくやって読み手の想像力をかき立てるだろうに、ともかく淡白な筆致なのだ。

それでも、いまだに日常生活の中に神事が根強く残る沖縄の、一つの姿を垣間見ることができる。

| | コメント (0)

2010年1月31日 (日)

『野鳥図鑑』

Book

度重なる野鳥観察で・・・

野鳥公園でもらったパンフレットだけじゃ、やっぱり不足だということになり、

とうとう購入(笑)

しかしコレが面白い。

鳴き声のCDまで付いている。収録数は90を超えると言う大作。

一種類ごと、非常に丁寧な解説が付いていて、「ほぉ~」「へぇ~」の連続。

どうせスズメだろう、とこれまで真剣に見ることすらしなかった小型の鳥の中に、実はスズメではない種の鳥が混じっていることがある。

今は鳥が面白い!

愛用のミニベロに乗り、双眼鏡とおにぎりを持って、野鳥の観察に足を伸ばす・・・

昨年までは考えられなかった展開だ(笑)

次の沖縄は、今までとは違う視点で楽しめそうである。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年2月 5日 (木)

対岸の彼女

これは書かずにいられない。

『対岸の彼女』 角田光代氏の作品である。

自分が小説を購入する時は、(ほぼ100%文庫だが)カバーに書かれている「あらすじ」を読んで決める。
好きな作家はエッセイを除いて無条件に買ったりするが、初めての作家の場合は必ずこの「あらすじ」に目を通す。

この作品は二人の対照的な女性の友情と亀裂ストーリー。
思うに任せない日々に鬱々としている主婦、小さいながらも会社を起こし活動的に生きる女社長・・・

2005年の直木賞受賞作品でもあるが、これは少なくとも自分にとっては購入の決め手ではない。

大好きな乃南アサ系のストーリーかと思ったのだが、これが違った。

一見正反対に見える二人が偶然に出会い、共に働いていく過程で起こる共感やすれ違いを通して、現代の女性の多様な生き方を描いていく・・・

などと表現すれば、まぁ「当たらずとも遠からず」なのだろうが、この小説の面白さは実はその女社長の青春期の回想にある。

「今」の節目にこの回想が断片的に挿入されていくのだが、この若い頃のストーリーと描写が何より抜群だ。
切なくて切なくて、どうしようもない。
この描写があるからこそ、「今」の彼女がひときわ際立つ。

珍しく寝る前にも本を広げた。翌日は電車を乗り過ごした。

久しぶりに、本当に久しぶりに、夢中になれる小説に出会った。

| | トラックバック (0)

2007年10月27日 (土)

ナツコ

台風接近中。朝からしっかりと雨が降っている。

テニスもないので外出しようと思ったが、思いのほか雨脚が強く、その意欲も萎えた。

Book 『ナツコ ~沖縄密貿易の女王』(奥野修司/文春文庫)

「沖縄」に反応して買ったものだが、コレがなかなか面白い。

時代は太平洋戦争直後の混乱期の沖縄である。

沖縄と言うと、古くは琉球王朝時代から昭和に至るまで、“大和”に支配、差別されてきた歴史がある・・・と思っていたが、いやもちろんその史実は消えないのだが、そんな中で民衆が常に虐げられ、苦しい悲惨な歴史ばかりを刻んできたのかと言うと、決してそればかりではないということをこの作品は教えてくれる。

終戦直後の、貨幣は愚か物資の流通まで厳しく統制されていた時代、少なくとも“表向き”は統制経済だった時代に、逞しくしたたかに疾走した一人の女性の物語だ。

「密貿易」というと、法を犯した貿易と言う意味に加え私腹を肥やすイメージがあるが、主人公であるナツコは、利益を分配し、人を育て、周囲に生きる力を与えていた点で、「義賊」の様相を呈しているのだ。

占領政策から明らかに置き去りにされた沖縄で、混乱をものともせず、むしろそれを逆手にとって、国家や法、米軍を向こうに回し、一時代を築いて駆け抜けたその生き様は実に痛快だ。

そんな彼女でありながら、その記録はほとんど残っていない。

当時を知る数少ない存命中の人々から丹念に取材し、彼女の生い立ちから38歳と言う若さでこの世を去るまでを見事に再現したこの作品は、もう一つの沖縄の歴史、裏の歴史書としても非常に興味深い。

一読の価値あり

| | トラックバック (0)